氏名 小糸祐介
居室 大岡山キャンパス東2号館307(安藤研究室内線2889)
e-mail ykoito@polymer.titech.ac.jp
研究テーマ 固体NMR法を用いた含フッ素化合物の構造解析
〜研究テーマ〜

含フッ素化合物/多糖類包接化合物の調製と固体NMR法による構造解析
背景
シゾフィラン(SPG)はスエヒロダケから抽出される多糖類の一種であり、分子構造にはD-グルコースがにより連結した主鎖骨格を持ち、一部β1→6結合の側鎖を含んでおり、そのため天然では三重らせん構造を形成することが固体1H→13C CP NMR測定等により明らかになっている。この構造は強塩基性水溶液に溶解すると3本のランダムコイル鎖に解離するが、再びpH値を元に戻すことでらせん構造が再構築される。この過程において一部の疎水性分子を共存させると、疎水性相互作用により、SPGらせん構造内部の空間に分子が包接されホストゲスト包接複合体(IC)が水溶液中で形成されることが明らかとなった。今回私は、ゲストとしてC9F20,PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの含フッ素化合物を用いたICを調製し、固体NMR法やFT-IR法などを用い固体状態でのICの同定やゲスト分子の構造解析を行うことを目的としている。


1H→13C CP NMR spectra
実験方法
SPGをNaOHaq.に溶解後、C9F20をSPG水溶液に滴下し、超音波印加により分散させる。その後、このC9F20分散溶液にHClaq.を溶液が酸性になるまで徐々に滴下する。2日間静置後、1週間溶媒置換を行い、溶液中の塩濃度を希釈させる。溶媒を蒸発後、生じた固形物から未反応のC9F20から未反応のC9F20を取り除くため125℃2h真空乾燥し、試料(C9SB)として用いた。また対照試料としてSPGをあらかじめHClaq.に溶解させ、他同条件で調製した試料(C9SA)も作製した。

結果・考察


 


  調製したC9SBとC9SAの固体19F MAS NMR測定の結果を各信号の帰属とともに示した。結果、C9F20は、真空乾燥後も試料中に残存していることが分かる。これはC9F20がSPGとの間で何らかの相互作用をしていることを示している。また各試料C9SB,C9SAを比較すると、C9SBの方が信号強度が明らかに強くSPGをNaOHaq.に溶解させランダムコイル状態を経由することで、よりIC形成能が高まることが示唆された。またSPGに捕捉されたC9F20の半値幅は100Hz程度でありC9F20はIC中において非常に液体に近い状態であることが分かった。
 またIR測定においてもC9SBにはゲスト分子であるC9F20のピークが1300cm-1〜1100cm-1程度に観察された。
 今後、H-F-X三重共鳴プローブをもちいた19F→13C CP NMRなどの手法を通してICの解析を進めることを考えている。

学会発表
・小糸祐介,龍野宏人,山田和彦,安藤慎治, NMR討論会予稿集, 48, 310 (2009)
・小糸祐介,滝上義康,安藤慎治, 高分子討論会予稿集, 58, 1118 (2009)