(韓国 釜山にて)
氏名: 松田 祥一 (S53.4.1生まれ)
居所: 大岡山キャンパス 南1号館518号室 (内線2889)
連絡先: smatsuda@polymer.titech.ac.jp
経歴:
2000年3月 東京工業大学 高分子工学科 卒業
2002年3月 東京工業大学大学院 理工学研究科 有機・高分子物質専攻
修士課程修了
2005年3月 東京工業大学大学院 理工学研究科 有機・高分子物質専攻
博士課程修了・工学博士
2005年4月 日東電工株式会社入社
 
専門分野: 高分子/金属ナノハイブリッドの光物性、高分子構造解析
所属学会: 高分子学会、応用物理学会、ポリイミド研究会
博士論文
題目:
「銀ナノ粒子を含有したポリイミド薄膜の光学特性とその制御に
関する研究」
主な任務: 研究、測定装置開発、ホームページ作製、飲み
研究内容のご紹介
吸収型偏光子の偏光特性制御
 金属はナノメートルオーダーの微粒子(ナノ粒子)になるとプラズモン共鳴吸収と呼ばれる特異的な光吸収が生じることが知られております。この光吸収はナノ粒子を取り囲む媒体の屈折率やナノ粒子の粒径・凝集状態によって敏感に変化します。したがって、媒体の屈折率やナノ粒子の形状・凝集状態に異方性を持たせることで光吸収にも異方性(偏光透過二色性)が発現します。そこで、複屈折が大きくかつ金属ナノ粒子を熱還元によって析出させるのに好適な耐熱性高分子 -全芳香族ポリイミド- を用いて析出する金属ナノ粒子の形状・凝集状態制御を試みております。
- 高分子鎖の配向場を利用した制御 -
 有機溶媒可溶な硝酸銀などの銀化合物・錯体を含有する剛直なポリイミドの前駆体(ポリアミド酸)溶液を薄膜成型後、一軸延伸しながら同時に加熱イミド化を行うと(加熱延伸処理)、イミド化反応が進行しつつ分子鎖が強く配向し、その強い配向場中で銀が析出することでポリイミド薄膜内に形状・凝集状態に異方性を有する銀ナノ粒子(粒径 < 30 nm)が析出し、可視長波長-近赤外域で偏光特性を示すことを見出しました(右図)。反応系の雰囲気と最高温度での保持時間を最適化した結果、短距離光通信波長帯である波長850nm帯で偏光二色比 500:1 (27dB)以上を有する薄膜偏光子(膜厚14.8 um)が得られました。
- 高分子ブレンドの相分離構造を利用した制御 -
 サブミクロンスケールの相分離構造を有する2成分系ポリアミド酸ブレンド溶液に硝酸銀を溶解させることで、両相の金属との親和性の違いから分散相に銀イオンが優先的に濃縮され、これを薄膜成型後、加熱延伸処理を行うことで、引き延ばされた分散相中で銀が析出し、長軸粒径が最大480 nm (アスペクト比 < 5)の銀ナノロッドが長軸を延伸方向に並んだ状態で析出し、近赤外域で偏光特性を示すことを見いだしました。加熱延伸条件を最適化した結果、中・長距離光通信波長帯である波長1200-1700 nm全域で偏光透過二色比 300:1 (25dB)以上を有する薄膜偏光子(膜厚14.5 um)が得られました。

- 関連文献 -
1) S. Matsuda, S. Ando, and T. Sawada, Electron. Lett., 37, 706 (2001).
2) 松田 祥一, 安藤 慎治,「ポリイミド最近の進歩2001」, ポリイミド研究会編, 繊維工業技術振興会, p.91 (2001).
3) S. Matsuda and S. Ando, Polym. Adv. Technol., 14, 458 (2003).
4) 松田 祥一, 安藤 慎治, 高分子論文集, 61, 29 (2004).
5) S. Matsuda and S. Ando, Jpn. J. Appl. Phys., 44, 187 (2005).


散乱型偏光子の偏光特性制御
 複屈折性の大きく異なる二種の高分子で構成されるマイクロメートルスケールの相分離構造を有する高分子ブレンド・共重合体は一軸延伸を施すことで異方的な光散乱(延伸方向と垂直方向で偏光の散乱度合いが異なる現象)が生じることが知られております。これは両物質間の各方向における屈折率差に起因しているため、特定の相のみ選択的に屈折率を変化させることでこの光散乱の異方性を制御することを試みております。
 剛直な構造を有するジアミン(連続相)と柔軟で金属と親和性の高いジスルフィド結合を有するジアミン(分散相)を用いたマイクロメートルスケールの相分離構造を有するポリイミドフィルムは一軸延伸を施すことで異方性光散乱が生じ、このマトリクス中で銀を析出させると、分散相に選択的に銀ナノ粒子(粒径 < 10 nm)が析出し、分散相の屈折率が上昇することで、結果として光散乱の異方性が2倍以上に増大することが示されました(右図)。これより、選択的銀ナノ粒子ドーピングがこのような光散乱異方性の増大に有用であることが示されました。
- 関連文献 -
1) 松田 祥一, 安藤 慎治, 応用物理学会春季大会予稿集, 51, 1092 (2004).
2) 松田 祥一, 安藤 慎治, 高分子討論会予稿集, 53, 3684 (2004).


高分子の配向状態評価
 高分子は一般にその配向状態によって光学的性質が大きく異なります。特に剛直構造を有する芳香族系高分子では繰り返し単位あたりの分極率の異方性が大きいため、分子鎖の配向により非常に大きな複屈折が生じることが知られております。この高分子鎖の配向状態を評価する方法には、X線法や偏光IR法、偏光ラマン法、複屈折法、偏光蛍光法、広幅NMR法など様々な方法が開発されておりますが、非晶性および半結晶性高分子のフィルム状試料では厚さ方向の配向状態も容易に評価できる偏光ATR FT-IR法が適していると考えられます。
 この偏光ATR FT-IR法を用いて剛直構造を有する含フッ素ポリイミドPMDA/TFDBに一軸延伸を施したフィルム
における分子鎖配向状態を評価したところ、低延伸フィルムでは面配向状態であり、それが二軸配向を経由して一軸配向に変化していく様子が定量的に示されました。さらに、配向状態と面内複屈折の関係を議論することで、二軸配向試料から固有複屈折値を算出することが可能となり、PMDA/TFDBの固有複屈折が0.33と他の汎用プラスチックに比べて非常に大きな値であることが明らかとなりました(右上図)。

- 関連文献 -
1) 松田 祥一, 照井 貴陽, 安藤 慎治,「ポリイミド最近の進歩2002」, ポリイミド研究会編, 繊維工業技術振興会, p.82 (2002).
2) S. Matsuda and S. Ando, J. Polym. Sci., Part B: Polym. Phys., 41, 418 (2003).



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