氏名   莇 昌平
出身   埼玉県
居室   大岡山キャンパス南1号館5階518号室(安藤研究室:内線2889)
mail    sazami@polymer.titech.ac.jp

研究テーマ   超高圧印加によるポリイミドの光物性変化
  
研究目的
ポリイミド(PI)は高い耐熱性を有し、航空・宇宙産業などで広く 利用されています。また、近年では光学材料や発光材料として期待されており、開発が進められています。 PIの化学構造は酸無水物部分とジアミン部分からなります。酸無水物とジアミン部分の間では電荷移動 (CT)相互作用が起こり、この相互作用はPIの透明性、蛍光性などの物性に大きな影響を与えます。 さらに、CT相互作用は分子間でも起こり、PIの凝集状態が変化することにより分子間CTの働く度合いが 変化すると予想されます。結果として、凝集状態が変化することによってPIの光物性が変化すると予想 されます。従って、PIの光物性を考える場合、その凝集状態と分子間相互作用の関係について調べる ことは非常に重要です。本研究では、PIfilmに圧力を印加することによって凝集状態を変化させ、 光吸収スペクトルを測定することにより分子間相互作用の変化、特に分子間CTの変化について調べる ことを目的としています。
実験方法
本研究では、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を加圧装置に用います。 圧力範囲は大気圧〜約10万気圧まで可能です。 DACは、上下のダイヤモンドによって試料室(直径約200 μm)を圧縮し、圧力を発生させる仕組みとなっています。試料室内の圧力は、 サンプルとともに入れたルビーの蛍光波長シフト値から算出します。光吸収スペクトルは、 真ん中の図のように上下ダイヤの窓を通ってきた光を測定することにより得られます。

結果・考察

PMDA/ODA s-BPDA/PDA

PMDA/ODAを約8 GPaまで加圧し、光吸収スペクトルの測定を行ったところ、加圧前を基準にした 差スペクトルにおいて、約400 nm〜500 nmの波長域で明らかな吸光度の増加が観測された。こ の吸収帯はCTが関係した吸収帯であるため、加圧によりCT相互作用を起こす分子の数が増加し ていることを示す。 一方、s-BPDA/PDAにおいては、CT性吸収帯の波長域で吸光度の増加が観測されなかった。こ れは、s-BPDA/PDAはCTを起こすためのエネルギーがPMDA/ODAよりも大きく、CT性が弱いため、 圧力印加でCTを起こす分子の数があまり増えなかったものと考えられる。
<学会発表>
莇 昌平・植竹 和幸・安藤 慎治 ”超高圧印加によるポリイミドの光吸収スペクトル変化”
日本ポリイミド・芳香族系高分子会議要旨集, 14(1), 2005

莇 昌平・植竹 和幸・安藤 慎治 ”超高圧印加によるポリイミド薄膜の光吸収挙動の変化[1]
〜全芳香族ポリイミドの立体構造と高圧下における電荷移動相互作用の関係〜”
高分子学会予稿集, 58(1), 1526(2006)