氏名 村上 公也 (むらかみ きみや)
所在 大岡山東2号館308号室 (内線2889)
e-mail
kmurakami@polymer.titech.ac.jp
研究
テーマ
In situ析出法による可溶性ポリイミド/MgOナノハイブリッド薄膜の調製と熱伝導性評価

研究紹介

目的
 
近年、高性能化に伴い放熱量が増大している電子デバイスの放熱効率向上のため、層間絶縁膜等に用いる高分子薄膜の熱伝性向上が求められています。本研究では、ポリイミド(PI)薄膜における膜厚方向の熱伝導率を"高熱伝導性粒子とのハイブリッド化"により向上させることを目的として、可溶性PIと酸化マグネシウム(MgO)の前駆体の混合溶液をキャスト後加熱してin situでMgOを析出させることで、高熱伝導性粒子であるMgOのナノ粒子を均一分散させた薄膜を簡便に創製しました。また、ハイブリッド薄膜の熱伝導性を評価し、in situ析出法でのハイブリッド化による熱伝導性向上効果について検討しました。

実験

   
 In situ析出法はハイブリッド化手法として一般的な直接分散法に比べ、粒子が凝集しにくく均一な薄膜を作りやすい利点があります。本研究では、MgO前駆体として酢酸マグネシウム(MgAc)を用いました。

結果と考察


 加熱後のハイブリッド薄膜について、遠赤外吸収(Far-IR)スペクトル、広角X線回折(WAXD)、25Mg 固体NMR測定によって化学組成を解析しました。一般に大学等で使用されているNMR装置では磁場強度が足りないため25Mgの測定は困難ですが、独立行政法人 物質・材料研究機構保有のJEOL ECA 930 spectrometer(左上写真) を用いることで、25Mg 固体NMR測定を行うことができました
(清水禎 研究室との共同研究)。
 Far-IRスペクトルにおいてMgO由来と考えられる430cm-1付近の吸収が生じ、WAXDパターンにおいてもMgO由来のピークが観測されました。さらに、25Mg 固体NMR測定によってハイブリッド薄膜中でMgOの前駆体であるMgAcが消失し、MgOに変換されていることが明らかとなりました。これらの結果から、in situ析出法によりMgOが薄膜中で生成したことが確認できました。


 
 In situ析出法と直接分散法で調製した薄膜の熱伝導率の実測値とBruggemanの式から求めたハイブリッド材料の熱伝導率の予測値を上図に示します。In situ析出法で作製した薄膜の熱伝導率はMgO濃度が増大するにつれてほぼ線形に上昇し、上昇幅は直接分散法で作製した薄膜の実測値及び、予測値と良く一致することが明らかとなりました。

<学会発表>
村上公也, 依藤大輔,安藤慎治, 高分子学会予稿集, 58(1), 1425 (2009).
村上公也, 安藤慎治, 日本ポリイミド・芳香族系高分子会議要旨集, 17(1), 14 (2009).