氏名: 関野 裕幸
 居所: 大岡山キャンパス 南1号館518号室 (内線2889)
 連絡先: hsekino@polymer.titech.ac.jp
 専門分野: 高蛍光性ポリイミド
 所属学会: 高分子学会、ポリイミド研究会
研究内容のご紹介
 
高蛍光性ポリイミドの創製とその発光制御
 ポリイミドは本来蛍光性物質であり、電荷移動(CT)蛍光と局所的な電子の遷移に基づく蛍光(LE蛍光)の2種類が存在することが知られています。ポリイミドは電荷移動相互作用が非常に強く、CT蛍光が非常に起こりやすくなっていますが、同時に無輻射失活過程が非常に起こりやすいためにポリイミドの蛍光強度は非常に弱くなります。そのためポリイミドの高蛍光化にはCT蛍光を抑制しLE蛍光を向上させることが重要であると考えられます。量子化学計算から、CT性の抑制には脂環式ジアミンを用いることが有用であることが予測されます。また、酸無水物へのフッ素基の導入により蛍光波長を長波長に変化させることで可能であり、蛍光強度が向上することが予測されます。
 剛直な含フッ素酸無水物と脂環式ジアミンの組み合わせでは、赤色の蛍光が得られました。蛍光強度は比較的蛍光強度の強い一般的なポリイミド(BPDA/PDA)に比べ、10倍もの強い強度が得られました。しかしこのポリイミドは剛直であるために分子間CTと推測される蛍光も存在しています。そのため分子鎖の凝集を疎にすることで、蛍光強度の飛躍的な向上が可能と推測されます。
 そこで分子鎖の凝集を疎にするために柔軟なエーテル結合を有する含フッ素酸無水物を用いました。CT蛍光が抑制され、LE蛍光だけが得られるようになり、また一次構造の変化により酸無水物の電子受容性が低下し、蛍光波長は短波長シフトし緑色の蛍光が得られました。この蛍光強度はBPDA/PDAに比べ100倍以上の非常に強い強度が得られました。
 蛍光強度を強く維持したまま蛍光波長をより短波長にシフトさせるために、柔軟な主鎖構造を維持したまま酸無水物部分のフッ素を水素に置換することで、酸無水物の電子受容性を低下し、青色の蛍光が得られました。蛍光強度はBPDA/PDAと比べ60倍以上の強い強度が得られました。
 これにより耐熱性高分子であるポリイミドで光の三原色(赤・緑・青)の発光が高効率で得られました。
- 関連文献 -
1) 関野 裕幸, 浦野 裕一, 植竹 和幸, 安藤 慎治, 高分子学会予稿集, 53(1), 1543 (2004).
2) 化学工業日報新聞記事
3) 日刊工業新聞新聞記事
4) Hiroyuki SEKINO, Yuichi URANO, Shinji ANDO, China-Japan Seminar on Advanced Aromatic & Condesation Polymers (Hangzhou, China) (2004).
 
高蛍光性ポリイミドの励起発光過程の解析
 高蛍光性ポリイミドの発光機構や動的挙動には未だに不明な点が多くあります。時間分解蛍光測定を用いて、電荷移動(CT)蛍光と酸無水物部分の局所的な電子の遷移に基づく蛍光(LE蛍光)の発光機構の解析を試みました。
 LE蛍光しか存在しないポリイミドでは、LE蛍光はナノ秒単位の寿命を有しています。一方、CT蛍光とLE蛍光が存在するポリイミドでは、LE蛍光はピコ秒単位の寿命を有しています。LE蛍光とCT蛍光が存在するポリイミドでは、LE蛍光に比べCT蛍光の蛍光減衰曲線に明確な’遅れ’が存在しており、これは励起LE状態から励起CT状態への電子の移動が起こっていること示唆しています。そのため励起LE状態の電子は見かけ上、速く消滅するので、LE蛍光しか存在しないポリイミドよりもLE蛍光の寿命が短くなっていると考えられます。
 
- 関連文献 -
1) 関野 裕幸, 浦野 裕一, 浅野 素子, 海津 洋行, 安藤 慎治, 高分子学会予稿集, 53(2), 4670 (2004).
2) 関野 裕幸, 浦野 裕一, 浅野 素子, 海津 洋行, 安藤 慎治, 日本ポリイミド・芳香族系高分子会議要旨集, 13, 23 (2004).

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