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アイコン 名前: 依藤(よりふじ) 大輔
アイコン e-mail: dyorifuji@polymer.titech.ac.jp 
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経歴:
2004年3月    神戸大学大学院 自然科学研究科
          情報知能工学専攻 修士課程修了
2004年4月  
〜2007年1月  日本モレックス(株)勤務 (製品設計担当)

2007年10月〜  東京工業大学大学院 理工学研究科
          物質科学専攻 博士後期課程在学中
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好きな言葉:   温故知新
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博士課程での目標: 世の中に役立つ新規材料の創製及び
             上記実現の為の理論的設計指針の確立

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  研究テーマ 耐熱性を有する高熱伝導性ポリマー及びポリマーハイブリッド
           材料の創製技術に関する研究
  
研究の目的
本研究では、半導体素子やパワーデバイスにおける発熱問題を背景とし、放熱シートや層間絶縁膜としてそれらのデバイスに使用される耐熱性高分子薄膜、主としてポリイミド薄膜に、従来以上の高い熱伝導性を付与するための設計指針の確立を目指しています。

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研究内容の紹介
- ポリイミドブレンドを用いた選択的銀ナノ粒子析出による熱伝導パスの形成 -
 
 ポリマーに高熱伝導性フィラーを充填させたポリマーハイブリッド材料において、ハイブリッド材料に十分な熱伝導性を付加させるためには、ポリマーに多量のフィラーを充填させる必要があり、それによる柔軟性及び接着性の低下が問題となっています。また、放熱シートや層間絶縁膜においては、薄膜の膜厚方向への高い熱伝導性が求められています。
 そこで、金属との親和性の異なる2種のポリイミド(PI)前駆体のブレンド物を用いて、膜厚方向に共連続な相分離構造を発現させ、加熱イミド化時に銀ナノ粒子を高金属親和性相に選択的に析出させることで、他方が銀ナノ粒子の排除領域となり、膜厚方向に銀ナノ粒子リッチ相が並んだ熱伝導パス形成を促進して、効率的に熱伝導率を向上させる新たな材料設計を提案し、その妥当性を検証しました。
 具体的な分子設計指針としては、高金属親和性相に含硫黄PI、低金属親和性相に含フッ素PIを用い、2種のブレンド比を調整することで膜厚方向に共連続な相分離構造を有するハイブリッド薄膜を得ました(図1(a))。断面SEM像において(図の中央部が薄膜)、白い領域が含硫黄PIリッチ相、黒い領域が含フッ素PIリッチ相を示しており、
X線エネルギー分析(EDS)において、含硫黄PIリッチな相に銀が選択的に析出していることが確認できました。 得られた薄膜の熱伝導性評価を行ったところ、共連続な相分離構造を有する系(図1(a))は、同じ銀ナノ粒子の含有率でありながら、銀ナノ粒子が均一に分散した系(図1(b))や、海島構造の相分離を形成する系(図1(c))と比較して、高い熱伝導性を有しており、熱伝導パス形成による有意性が示されました。

図1 ハイブリッド薄膜の断面SEM像(反射電子像観察)
(a) 共連続構造 (b) 均一分散 (c) 海島構造

-関連文献-
依藤大輔,安藤慎治, 高分子学会予稿集,57(2), 3502 (2008)
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- ポリイミド薄膜における分子構造・高次構造と熱拡散率の関係 -
 
 熱拡散率とは、熱伝導率を比熱容量と密度で除算した、熱伝導率の支配要因となる物性値です。ポリマーのような非結晶性絶縁体においては主に格子振動によって熱が伝えられるため、剛直な構造であるほど熱拡散率は大きく、また一軸延伸により分子鎖を配向させるとその方向に熱拡散率が増大することが知られています。
  
 

 そこで、様々な分子構造を有するポリイミド(PI)を用いて、分子鎖が面内に配向しやすい薄膜における、面外(膜厚)方向の熱拡散率a^と分子構造及び高次構造との関係を、分子鎖の配向の半定量的な評価として用いられる複屈折(Δ
n)を考慮した評価式φTMを用いて考察しました。具体的には交流温度波分析法によりa^を測定し、プリズムカプラにより薄膜の面内方向屈折率(nTE)と面外方向屈折率(nTM)を測定しΔn 及びφTMを算出しました。
 結果として、φTM値とa^には正の相関が見られたことから(図1)、PI薄膜における面外方向の熱拡散率は分子構造の剛直性のみならず、面内方向への配向度や面外方向への分子鎖の凝集状態の影響を受けることが明らかとなりました。結果より得られた高熱伝導性ポリマーの設計
指針としては、高い屈折率かつ低い複屈折、つまり稠密な分子構造及び高次構造を持ちかつ面内に配向しにくい構造が有効であると考えられます(図2)。また、主鎖に硫黄原子を含んだPIにおいては、大きなφTM値にもかかわらず主鎖に硫黄原子のような重元素を含まないPIに比べて低い熱拡散率を示しており、この結果はPIのような非結晶性絶縁体の熱伝導の要因である、原子核の格子振動によるフォノン速度が、重元素(硫黄)の導入により低下するとの過去の知見と符合しています。
                                     
       
図1 φTM と面外方向熱拡散率 a^ の関係 図2 φTM の定義式

-関連文献-
依藤大輔,安藤慎治,橋本寿正, 高分子学会予稿集,57(1),1389 (2008)
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