氏名 | 鈴木温久 |
居室 | 大岡山キャンパス南1号館5階565号室(安藤研究室内線2889) |
atsuhisa_suzuki@polymer.titech.ac.jp | |
研究テーマ | ポリイミド系ハイブリッド材料の光物性 |
〜研究テーマ〜
低屈折率含フッ素ポリイミド/MgF2ナノハイブリッド材料の創製と光学特性ポリイミド(PI)は高い耐熱性と機械強度を有しますが、一般に黄色〜茶褐色に着色しています。私たちの研究室ではこれまでにPIにフッ素基や脂環構造を導入することで透明性に優れ、低屈折率を示すPIが得られることを明らかにしてきました。低屈折率材料は反射防止膜や有機ELにおける光取り出し効率向上膜などに応用されています。私は従来よりもさらに低い屈折率を有するPI系の材料を作製するために、含フッ素PI(屈折率:1.510)と代表的な低屈折率ガラスであるMgF2(屈折率:1.373)のナノハイブリッド化により、新規の耐熱性・高透明性・低率ポリマー材料を調製しました。
研究目的
実験方法 PIは一般的に溶媒に不溶であるため、PIフィルムは溶媒(DMAc)に可溶なポリアミド酸(PIの前駆体)を基板上に塗布し、約300℃で熱処理することで作製されます。MgF2はポリアミド酸溶液に不溶であるため、MgF2をポリアミド酸溶液に分散させ、熱処理したPI/MgF2ハイブリッドフィルムは、粒子の凝集が起こり透明性の低いフィルムとなります。そこで、イミド化反応と同時に、Mg(CF3COO)2からMgF2への熱分解反応を起こすことで、粒子の凝集を抑制できると考えました。MgF2の前駆体の条件としては、@ポリアミド酸溶液に可溶であることAイミド化温度以下でMgF2へと反応すること、の二つの条件が挙げられます。本研究ではこれらの条件を満たす物質としてMg(CF3COO)2を用いました。また、最高加熱温度を200, 250, 300℃としたフィルムをそれぞれ作製しました。
結果・考察
UV-visスペクトルよりハイブリッドフィルムはPIフィルム単体(0mol%)と同程度の透明性を有していることがわかります。また、ハイブリッドフィルムの遠赤外吸収スペクトルと固体19F NMRスペクトルから、
300℃で加熱することによって、フィルム中でのMg(CF3COO)2の熱分解反応の進行が確認されました。また、その反応率は93.3%でした
上の屈折率変化のグラフにおいて○印は実測値で、曲線は
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(n:屈折率, f:体積分率, r:Mg(CF3COO)2の反応率 添字 h:ハイブリッド, p:PI,m:Mg(CF3COO)2, M:MgF2)
から算出したハイブリッドフィルムの屈折率である。実測値と良い一致を示していることから、この式を用いて、ハイブリッドフィルムの屈折率をある程度、予測・制御できることがわかりました。また作製したフィルムで、Mg成分を150 mol%ハイブリッド化させ、200, 250, 300℃で加熱したフィルムでそれぞれ-0.0308 (-2.04%), -0.0325 (-2.15%), -0.0129 (-0.83%)の屈折率低下が観測されました。